(18)(17)と同様に、知識がなくても文脈把握と消去法で解くことが可能です。問題文には、「日本語から英語へ(18)するときは…(16)も同時に切り替えることが重要である」と書かれていますから、文脈から判断すると、(18)に入るのは、「切り替える」という意味の語だ、ということがわかります。選択肢を見てみると、「切り替える」という意味になりそうなのは4の「コード・スイッチング」しかありません。『異文化コミュニケーションワークブック』には「コード・スイッチング(コードの切り替え)」と書いてありますが、これは、「二つの言語変種の切り替え」で、例えば、南米アメリカの日系人の児童が学校では日本語を用い、母国の知人に会ったときにはポルトガル語で話したりすることです。

もうお分かりのとおり、(18)の正解は4の「コード・スイッチング」ですが、ほかの選択肢も見ておきましょう。1の「ボトムアップ」は、外国語の授業では、個々の指導項目をきちんと理解、練習させてから全体のまとめに進む方式のことです。2の「スキャニング」は、「サーチ・リーディング」と呼ばれることもありますが、速読で、必要な情報だけを捜し出して読むことです。3の「ティーチャ―・トーク」は第二言語学習者に対する教師の話し方のことで、主な特徴は以下のとおりです。

@ ゆっくりした話し方で、単語を分離した注意深い発音。
A 使用頻度の高い語彙の使用。
B 短く、構造の簡単な文の多用。
C 相手が理解したか確認する。
D 相手の言ったことを確認する。
E 非文法的な文を避ける。
F 答えの明らかな明示的質問(ペンを指して「これは何ですか」と尋ねる、など)

繰り返しになりますが、上記のような問題を解く場合、異文化コミュニケーションの専門用語に関する知識ももちろん必要ですが、知識が不十分な場合でも、文脈を把握する力があれば正解に辿りつけます。検定試験の問題を解くときに大切なのは知識だけでなく、文脈を把握する力、それから、これは去年の試験では従来の試験に比べると試されることはかなり少なくなっていましたが、分析力だと思います。

去年の試験では、異文化接触を念頭においた問題が多く出題されました。出題範囲を見ても、「異文化」は、下記の表から分かるとおり、かなり重視されています。

1 社会・文化・地域 2.異文化接触
(1)異文化適応・調整
(2)人口の移動(移民・難民政策を含む。)
(3)児童生徒の文化間移動
2 言語と社会 3.異文化コミュニケーションと社会
(1)言語・文化相対主義
(2)二言語併用主義(バイリンガリズム(政策))
(3)多文化・多言語主義
(4)アイデンテイテイ(自己確認,帰属意識)
3 言語と心理 3.異文化理解と心理
(1)社会的技能・技術(スキル)
(2)異文化受容・適応
4 言語と教育

2.異文化間教育・コミュニケーション教育
(1)異文化間教育・多文化教育
(2)国際・比較教育
(3)国際理解教育
(4)コミュニケーション教育
(5)異文化受容訓練
(6)言語間対照
(7)学習者の権利

5 言語一般 3.コミュニケーション能力
(5)異文化調整能力

もちろん1回の試験で上記の全ての項目が出題されるわけではありませんが、異文化関連のことをしっかり勉強しておく必要がある、ということはもうお分かりでしょう。

 4月28日に開講されるAquaries大阪校の「日本語教育能力検定試験対策講座」では、異文化コミュニケーション関連の授業は、テキサス大学で異文化コミュニケーションを教えた経験をお持ちの植田一三先生と、ベテランの通訳ガイドで異文化コミュニケーションに関する造詣の深い石井隆之先生が担当されます。日本語教育に興味をお持ちの方だけでなく、英語などの外国語教育に関わっていらっしゃる方や通訳ガイドを目指されている方、現職の通訳ガイドの方などにも満足していただける授業内容ですので、ぜひ受講していただきたいと思います。

 

 

[参考文献]
日本国際教育支援協会『平成15年度
 日本語教育能力検定試験 試験問題』桐原書店 2004
八代京子他著『異文化コミュニケーションワークブック』三修社 2001
アークアカデミー編『合格水準 日本語教育能力検定試験 用語集』凡人社 2002