さてみなさんいかがでしたか。こういった日英発想の違いや英語の構文、多義性などを踏まえて美しいトランスレーションができるように頑張りましょう。

英日翻訳発想トレーニングの最後は、洋画「赤毛のアン」のせりふの翻訳にチャレンジして頂きましょう。場面は、孤児のアンがマリラの家に引き取ってもらえるかどうかのテスト期間中、マリラの友人が、アンの赤毛を悪く言ったため逆上したアンがマリラに説教されているシーンです。 

Anne: You’re rude, impolite unfeeling woman. And I hate you!” “How would you like to be told that you’re fat, ugly, and a sour old gossip?”
Marilla: Anne Shirley! You come back at once and apologize.
Rachel: Mark my words, Marilla. That’s the kind that puts strychnine(毒) in the well.
Marilla: You shouldn’t have twitted her(あまりひどいことを言っちゃだめよ). I’m not making excuses for her. But you were too hard on her(可哀想じゃないか), Rachel.
Rachel: I’ll have to be very careful what I say from now on. I’m too sorry for you to be angry. @The good sense I admire in you left you when that child walked in your door. Come see me when you can. But don’t expect me to visit here again.”
Marilla: Good-by, Rachel. AWhen I said trial, you took me literally. Of all people, you would pick on Rachel Lynde.
Anne: BShe hadn’t any right to say what she did.
Marilla: Rachel is too outspoken, but she is your elder, a stranger, and my guest, not to mention, my friend. CAll of them good reasons for you to have bit your tongue. You will go to her and apologize.”
Anne: I can never do that. You can punish me any way you like. You can lock me in a dungeon and feed me bread and water, but I cannot ask Mrs. Lynde to forgive me.”
Marilla: If you expect to remain under my roof, you will apologize to Mrs.Lynde.
Anne: Then, you’ll have to send me back.
Mathew: DRachel Lynde deserves what she gets.

1. 例の「無生物主語」になっていて、それを”leave”で受ける発想の英語は日本人には使えないでしょう。それを直訳すると不自然は日本語になりので、意訳すると「あなたの賢さは尊敬してたのにあの子が来てからというもの、いったいどうしちゃたの」とS+V+Oが消えます。
2. これも直訳するとわけが分からないので、意訳して「テスト期間と言った矢先にこれだわ。」となります。
3. Of all 〜で「よりにもよって」の意味になります。「よりにもよってレイチェルに絡むなんて」
4. 「あんな事言う権利なんて無いわ。」と訳すと、原意とのずれが起こります。日本語の「権利」は力と利益から来ており、英語の”right”よりきつくネガティブな感じが付きまとう。その英語に近い日本語は「そんなことを言うのは間違っている、アンフェアーだ」。
5. これも日本人には使いにくい英語の発想で、直訳して「それらすべてはあなたが口を慎む立派な理由となる」は専門書調のかなり不自然な日本語になるでしょう。何故かと言うと1つは、rightと同じくreasonは一般的な日本語訳の「理由」より意味の幅(semantic field)が広く、道理、理性、判断力、分別、理屈などの日本語この語によって表現できるのです。また、もう1つは日本文化では、前述のようにwhy-because思考は重要では無く、いちいち証明しなくてもいいので、理由と言うと不自然な日本語になってしますのです。よってこの文脈では「でも年上で、面識も浅く、お客さんで、しかも私の友達なんだから当然口を慎まないとね」とすると自然な日本語になります。
6. 出ました!典型的なS+V+Oが。これも直訳すると「レイチェルは彼女が得ることに値する」と汚い日本語になってしまいますね。自然な日本語にすると「レイチェルはそう言われて当然だ」とS+V+C的になります。このdeserveは非常に重要で役に立つ語で、”Your good English deserves this advanced class.(君の英語はうまいので、この上級クラスに入れます)”の他、deserve punishment[praise, attention, mention, consideration, death, better, sympathy]のように幅広く使えます。

さていかがでしたか?洋画や邦画を比較コミュニケーション学、翻訳学の見地から勉強することが、翻訳力UPにいかにためになることがお分かり頂けたでしょう。

こういったアプローチは直説法の限界を補うばかりか、比較文化を通じて異文化ひいては人間の心理洞察につながり、単なる「英語」の勉強とスキルUPではなく、真の「英悟」をすることができるのです。それが英語学習の醍醐味なのです。

Let’s enjoy the process! (陽は必ず昇る!)